草地と共に減っていく鳥の謎を解け!
研究対象:二次草原に棲む鳥全般、希少種
分野:鳥類学、生物多様性、絶滅危惧種、保全、繁殖生態、GISなど
研究タイトル:草原・疎林性鳥類群集に影響する要因および希少鳥類の保全に関する研究
研究者のwebサイト:https://lifeofwildbirds.jimdofree.com/
背景
鳥の仲間にもさまざまな種類がいます.
海辺が好きな鳥,
深ーい山奥が好きな鳥,
大きな樹木が好きな鳥,
中には都市が好きな鳥も....!?!?(図1)
人間による環境破壊や気候変動などによって,世界規模で鳥の数は減ってきていると言われています. なかでも水村氏の研究では,特にその減少が深刻だと言われている「広い草地や疎林を好んで生活する鳥」に着目して研究を行なっています.
草原などの開けた場所は二次草原(火入れや採草など,人による管理で維持される草原)と呼ばれ,鳥を含めさまざまな生き物の住処になっています.草地は放置しておくと次第に森へと遷移(移り変わること)してしまうため,人が定期的に木を切り,草刈りをする必要があるのですが,農作離れや生活スタイルの変化に伴ってそれらを担う人がいません.
そのため草地だった場所は森へと変わり,広い草地を好んで生活する生き物全般においてその数が減っていると考えられます.しかし,どのような草原がより多くの種にとって棲みやすいのか,特に減少が激しい絶滅危惧種にとって重要な環境の特徴はなんなのか詳しく分かっていません.
研究内容
これまでにも,どのような環境が草地を好む鳥[開放地性鳥類]にとって大事なのか,どのような管理方法が草地の維持に適しているのかを長期的な側面から明らかにした研究例はありました.しかし,日本を含むアジア圏においてそのような研究例は少ないのが現状です.
そこで,水村氏は鳥の数が増えるために最も重要な時期である「鳥の繁殖期」に着目し,周辺に生えている植物の状況や餌となる昆虫の数や種類を細かく調査,分析しています(図2).分析によって,
①どのような環境があればより多くの種類,個体数の草地を好む鳥が繁殖を行うことができるのか
②減少が著しい種については営巣環境などの繁殖生態を詳しく明らかにし、何が減少に寄与しているのか、好適な繁殖環境はどのような特徴があるのか
を明らかにする研究に取り組んでいます。
研究者より一言
二次草原は、ずっと昔から人によって造られてきた環境です。人が手を入れていかなければ維持できない景観や、生き物も多くいます。私はとくに鳥類に着目して、たくさんの種が繁殖できる環境やそのメカニズムについて研究を進めています。これにより、減少している開放地性鳥類の保全にむけて必要な草原管理や土地利用の在り方を検討でき、人と鳥類がともに棲みやすくなる社会につながることを目指しています。
図2.草地を好む鳥が繁殖する場所の周りにはどんな植物が生えていて,餌となる昆虫は何がどれくらいいるのか,細かく調査!!
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