カヤネズミの存在が

生物の多様性を指標するかどうかの検証!!

研究対象:カヤネズミ、鳥類や哺乳類などいろいろ 
分野:生態学
研究タイトル:都市近郊の草地でのカヤネズミの指標種としての有用性
過去に行っていた研究:ドローンを活用した谷戸環境におけるカヤネズミの営巣植物の選好性

ドローンを操り,空撮を行なっている湯浅氏

背景

 草地生態系は生物多様性保全上重要ですが、人間活動の変化に伴い危機的状況にあります。温暖湿潤な日本においては、高山帯などの一部を除いて、草地は人為的な管理がなければ維持できない二次的な自然(二次草地)となっています(写真1)。

写真1.カヤなどが茂った草地.人の手が入らないと森になってしまう.

 かつては肥料や燃料、建築材としてカヤが利用されてきましたが(茅葺き屋根など)、高度経済成長期以降の生活様式の変化から人々にとっての価値は薄れ(資源としてカヤの需要低下)、明治期に国土の約15%程度を占めていた草地は、現在1%未満にまで減少しており、草地生態系の保全が急務であるといえます。

 限られた草地の保全を考える上で、都市近郊に残存する里山や河川敷草地の重要性が高まっています。人々にとっての草地の価値の消失、少子高齢化による管理者不足が問題視される日本において、優先的に保全すべきエリア(生物多様性のホットスポット)を可視化して、適切な保全策を講じることが求められています。 

研究内容

 そこで湯浅氏はカヤネズミに着目して研究を行なっています(写真2).

 カヤネズミは、土地改変の影響を受けやすいこと、適度な草地管理がなければ生息できないこと、特異的な球巣を作るため生息の確認が容易であることなどにより、特に都市域において良好な草地の指標種(*)として扱われている事例が多くみられます。一方で、実際にどの程度生物多様性を指標できるのか、科学的根拠が不足しているのが現状です。湯浅氏は,カヤネズミが生息している場所と生息していない場所においてそれぞれ節足動物群集・植物群落を調査比較しています(図1).それによりカヤネズミが生息している草地は生物多様性の度合いが高いのかどうか検証する研究に取り組んでいます。
*指標種とは:様々な環境を調べる際に,ある条件に敏感な生物を指標として指す言葉.本研究においては「良好な草地環境」の指標としてカヤネズミが有効な種かどうかをみている.

図1.カヤネズミがいる草地の方がいない草地よりも生物多様性の度合いが高い….かも!!

期待される成果

カヤネズミの生息確認を行うことで草地の生物多様性の高い場所の確認が容易となる!!
カヤネズミの調査データや市民調査結果を活用したホットスポットの可視化が可能となる。