新種がザクザク見つかる!―
世界で最も華麗で優雅な(研究者の主観が入ります)
寄生蜂、ナガコバチ科を日本人で初めて研究!

 

網を携える河野氏

研究対象:ナガコバチ科、コガネコバチ科 
分野:分類学
研究タイトル:アジアを中心としたナガコバチ科(ハチ目)の分類学
過去に行っていた研究:日本産有剣ハチ類の分類学的研究

背景

 「食の安全・安心」や「環境保全型農業」が注目される近年において,農業における安定した生産と安全な病害虫管理の両立が求められています.特に様々な手段を効率よく組み合わせて作物につく病害虫の防除を行う手法「総合的病害虫管理(IPM)」への関心は年々高まっています.中でも生物的防除と呼ばれる防除手段は,作物につく害虫に対して捕食や寄生をする生物(天敵)を活用して害虫の個体数を抑える技術です.日本においてはクリにつく害虫:クリタマバチに寄生して捕食するチュウゴクオナガコバチを中国から導入し,その被害を抑えた事例などがあります.

 上記のチュウゴクオナガコバチなどは寄生蜂と呼ばれ,とりわけコバチ上科の仲間は様々な農業害虫に捕食寄生することが知られているため,生物的防除に有望です.しかし日本ではコバチ上科を専門的に研究していた人がおらず,どれほどの種類がいて,どの害虫の天敵となっているのかほとんど分かっていませんでした.

図1.Balcha属の一種 (ナガコバチ科の一種)和名はまだない…!

研究内容

  河野氏はコバチ上科の中でもナガコバチ科に着目して調査・研究を行っています(図1).ナガコバチ科はこれまでに形態形質(顕微鏡などで観察した体の特徴など)でのみ種の区別がつけられていましたが,同じ種でも雌雄によって形態が大きく異なるなどの理由によってその識別は非常に困難でした.そのためナガコバチ科は日本国内で本格的な分類学研究が行われておらず,河野氏が研究を始める前は日本で7種類しか記録がありませんでした. 

 そこで河野氏は野外調査や飼育実験により日本にどれくらいの種類が存在しており,どのような生活史を持っているのかについてナガコバチ科の生態学的な基礎情報の集積を続けています.同時に.DNA情報による種の識別のためのデータベース構築や,農業害虫の天敵となるポテンシャルを持つ種はいるのかなどを含めて多角的なアプローチで研究に取り組んでいます.つまり日本におけるナガコバチ科の唯一の専門家なのです!!

期待される成果

  • 農業害虫の土着天敵となるハチが見つかれば,新たなIPM技術の開発につながり,農薬の少ない作物作りに役立つ!!

  • これまで100年近く研究されてこなかった,東アジアにおけるナガコバチ科の分類群学的研究の礎となり,今後の応用研究が大きく期待される!!

 

研究を遂行する際に困っていること

基礎的な研究ということもあり,他分野よりは研究費をそこまで必要としないが、やはり応募可能な研究助成が少ない…..